大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所田川支部 平成9年(ヨ)27号 決定 1998年3月26日

甲事件債権者

藤井美成外八名

乙事件債権者

河野礼至外一二名

丙事件債権者

江藤巖外一名

甲・乙・丙事件債権者ら代理人弁護士

井上道夫

幸田雅弘

武藤糾明

甲・乙・丙事件債務者

福岡産業開発株式会社

右代表者代表取締役

立石春子

甲・乙・丙事件債務者代理人弁護士

赤根良一

主文

一  甲・乙・丙事件債務者は、別紙物件目録記載の各土地上において、産業廃棄物の最終処分場を建設し、かつ、その使用及び操業をしてはならない。

二  甲事件債権者藤井美成、同岩本勉、同樋口秀隆、同佐藤昭孜、同中野角雄、乙事件債権者河野礼至、同中村明、同坂木重敏及び同佐藤瞠の本件申立てをいずれも却下する。

三  申立費用は、甲・乙・丙事件債務者の負担とする。

理由

第一  甲・乙・丙事件の申立ての趣旨

主文第一、三項と同旨

第二  事案の概要

本件は、甲・乙・丙事件債務者(以下、単位「債務者」という)が別紙物件目録記載の各土地(以下、「本件予定地」という)上に産業廃棄物の安定型最終処分場(以下、「本件処分場」という)を建設し、これを使用して操業する計画を立てたことについて、①水質汚染、②本件予定地近くの野呂ヶ池への汚染廃棄物流出・地盤陥没、③交通量の増大等の各差し迫った危険性の存在を理由に、右周辺地域を生活圏とする甲・乙・丙事件債権者ら(以下、単に「債権者ら」という)において人格権及び水利権等に基づく各差止請求権を被保全権利として、また別紙物件目録九ないし一一記載の各土地(以下、「本件係争地」という)の所有権者である乙事件債権者佐藤瞠(以下、単に「債権者佐藤瞠」ともいう)においてはその所有権を併せて被保全権利として、さらに丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は野呂ヶ池の所有権を併せて被保全権利として、それぞれ本件処分場の建設及び使用操業の差止めの仮処分申立てをした事案である。

第三  当事者の主張

一  債権者らの主張

1  被保全権利について

(一)(1) 債権者らは、いずれも福岡県田川郡川崎町の住民であり、本件予定地上の本件処分場に近接若しくはその流域に居住する者である。

そして、甲事件債権者杉本利雄、同野仲稲親、同中村信行、同中村智、同佐藤昭孜、乙事件債権者太田裕文、同伊藤憲子、同岩丸博重、同中原春夫、同大西広幸、同中村内廣、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は、井戸水を飲料水・生活用水として使用し、右以外の債権者らは水道水等を利用している。

したがって、債権者らには、人格権の一種としての平穏生活権の一環として、適切な質量の生活用水、一般通常人の感覚に照らして飲用・生活用に供するのを適当とする水を確保する権利が存し、本件処分場からの有害物質の流出により右飲料水が汚染される蓋然性があるときは、人格権に基づき、その侵害を予防するため差止請求権がある。

(2) また、甲事件債権者岩本勉、同中村智、同樋口秀隆、同中野角雄及び乙事件債権者中村明は、野呂ヶ池から流出する水を主に取水して農業用として利用している。また、甲事件債権者杉本利雄、同佐藤昭孜、乙事件債権者岩丸博重及び同中原春夫は、本件処分場近くの井戸からの水を農業用水としても利用している。

したがって、右債権者らには、人格権の一環として認められる平穏生活権に自らが食する食物を汚染されないという権利も包含するので、農業用水を汚染される結果、本件処分場からの有害物質の流出により自らが作る食物が汚染される蓋然性があるときは、人格権に基づき、その侵害を防止するため差止請求権がある。

(3) そして、甲事件債権者岩本勉、同中村智、同樋口秀隆及び乙事件債権者中村明は、野呂ヶ池の流出水について水利権を有する。

したがって、右債権者らには、本件処分場の設置により野呂ヶ池が陥没等する蓋然性があるとき、又は、本件処分場からの有害物質の流出により汚染される蓋然性があるときは、水利権に基づき、その侵害を防止するため差止請求権がある。

(4) 加えて、申立外川崎町上真崎行政区(権利能力なき社団)は、野呂ヶ池を所有しており、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は、右行政区の構成員である。

したがって、右債権者らには、本件処分場の設置により野呂ヶ池が陥没等する蓋然性があるとき、又は、本件処分場からの有害物質の流出により汚染される蓋然性があるときは、所有権に基づき、保存行為としてその侵害を予防するため差止請求権がある。

(5) さらに、債権者佐藤瞠は、本件予定地の隣接地に居住し、かつ本件予定地のうち本件係争地を所有する者である。

なお、債権者佐藤瞠が債務者に対し、本件係争地の使用を承諾したのは、債務者から「土捨て場として利用させてくれ」等と虚偽の説明を受けたうえ、これを拒否すれば、同債権者が経営している畜産業を続けられないようにすることをほのめかされて強迫されたためであるから、債権者佐藤瞠は、債務者に対し、平成八年九月一八日、右承諾の意思表示が要素の錯誤により無効であること、又は、詐欺あるいは強迫により取り消すことを通知し、仮に、右承諾の意思表示に瑕疵がないとしてもこれを解約する旨の意思表示をした。

したがって、債権者佐藤瞠には、本件処分場の設置により本件係争地が変形したり、地滑りや崩壊陥没等する蓋然性があるとき、又は、本件処分場からの有害物質の流出により汚染される蓋然性があるときは、所有権に基づき、その侵害を予防するため差止請求権がある。

(6) また、甲事件債権者藤井美成、同岩本勉、同杉本利雄、同中村信行、同樋口秀隆、同佐藤昭孜、乙事件債権者伊藤憲子、同佐藤瞠、同岩丸博重及び同中原春夫は、本件処分場への廃棄物搬入路を生活道路として使用している者であり、しかも右甲事件債権者杉本利雄、同佐藤昭孜、乙事件債権者佐藤瞠、同岩丸博重及び同中原春夫は、右搬入路付近で農業を営んでいる。

したがって、右債権者らには、本件処分場が操業されることにより多数のトラックが煩雑に往来して通行が妨げられるとともに、交通量の増大により平穏な生活を破壊する蓋然性があるときは、通行権・農業経営権あるいは人格権に基づき、その侵害を予防するため差止請求権がある。

(二)(1) 本件処分場は、安定型最終処分場であって、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、陶磁器くず及び建設廃材などのいわゆる安定五品目(但し、シュレッダーダストを除く)を埋立処分するものであるが、①右安定五品目に残存、付着している有害物質が漏出したり、安定五品目自体の化学変化等により有害物質が発生する危険性があること、②安定型廃棄物以外の廃棄物との分別が困難であること、③日本全国の安定型最終処分場における水質汚染が極めて広範に進んでいることが明らかである。

(2) 債務者は、何らの遮水工を施すことなくそのまま埋立てる本件処分場において、安定五品目以外の廃棄物の混入を防ぐための分別をすべきであるところ、債務者が予定している選別方法では、多種多様の廃棄物が混合で排出される建築系廃棄物について的確に安定五品目を選別することができない。

(3) 本件予定地付近は、断層が多く存在し、またいわゆる旧筑豊炭田のあった場所であって、「旧三矢三坑本卸」「旧三矢三坑本卸連」の二本の坑道から延びた坑道のほか、他にも坑口のある坑道があるが、これらの坑道は落盤したり、崩壊して広範囲にわたり地盤沈下をしている。野呂ヶ池も、昭和四四年に亀裂と漏水が発生し、鉱害の認定を受け、昭和四六年に改修工事が行われている。そして、本件処分場は、軟弱な地盤の上に擁壁と盛土で堰止められた谷部に大量の廃棄物を埋立てる計画であるため、地盤沈下及び地滑りのおそれがある。地盤沈下及び地滑りが発生したときは、盛土堰堤が崩壊し、土砂とともに有害物質を大量に含んだ廃棄物が流出し、直下の野呂ヶ池を汚染することが明らかである。

(4) 福岡県においては、「福岡県産業廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防及び調整に関する条例」を定めているが、これによると、産業廃棄物の設置に伴い生活環境に著しい影響が生じるおそれがあると想定される地域を関係地域と指定し、設置者は、原則として右関係地域内において関係住民等に対して事業計画の説明会を開催して事業計画の周知をはからなければならない(同条例七条、一〇条)。

しかし、右関係地域の指定に不備(説明会の開催の通知等がない)があり、事業計画が周知されていない等の本件処分場設置許可には著しい瑕疵がある。

さらに、債務者は、本件処分場設置許可及びこれに必要な諸手続において故意的若しくは重大な過失のもとに種々の法令違反若しくはこれに類する違法不当な行為を繰り返しているので、福岡県知事の本件処分場設置許可は無効とみるべきである。

(5) 結局、本件処分場からの有害物質漏出の蓋然性があり、また本件処分場設置許可に際しても適正な手続がなく、債権者らに回復不能な被害を発生させる危険性のある本件処分場の建設及び使用操業については受忍限度を超えている。

2  保全の必要性について

本件処分場が建設及び使用操業されることによる有害物質の流出等により環境が汚染された場合、現在の技術では容易にこれを除去することはできず、債務者に右技術も資力もない。

よって、債権者らは、債務者に対し、本件処分場の建設工事及び使用操業の差止めを求める緊急の必要性がある。

二  債務者の主張

1  本件処分場については、平成三年法律第九五号をもって改正された廃棄物の処理及び清掃に関する法律一五条及び同法施行令七条一四号口の各規定に適合する安定型産業廃棄物処分場として、平成七年八月一日、福岡県知事から所定の右設置許可を得た施設である。

2  また、債務者は、本件処分場を完成させても、操業を開始するには福岡県知事の「施設の使用承認」を得なければならないうえ、操業中にも同知事による「監視・指導」に服することになる。

3  しかも、債務者は、本件処分場の操業に際しては法律所定の環境汚染の防止策を施しており、また廃棄物の不適正な処理を規制することで右汚染を予防することができるうえ、本件予定地に侵入するための債務者専用取付侵入道路設置のための用地も確保できているので、債権者ら主張の差し迫った危険性はない。

第四  当裁判所の判断

一  被保全権利について

括弧内掲記の疎明資料、人証調べの結果、当事者間に争いのない事実及び審尋の全趣旨によれば、以下の事実が一応認められる。

1  本件処分場の概要

(一) 債務者

債務者は、産業廃棄物の処理業、土木工事業等を目的として昭和五五年六月六日に設立された資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、本件予定地上に本件処分場の建設及び操業を計画し、平成六年二月三日、その事業計画書を田川保健所に提出し、平成七年八月一日、福岡県知事からその設置許可を得た者である(甲二、三、乙六の一の一ないし六の一〇、七の一ないし四、八の一及び二、九の一及び二、一〇、一一、一二)。

なお、債務者は、本件予定地のうち本件係争地を除く主要な土地を所有している(甲一の一ないし二三、一〇八の一ないし三)。

(二) 本件処分場の位置及び坑道跡の存在

(1) 本件予定地の位置

① 本件予定地が存在する福岡県田川郡川崎町は、南北12.672キロメートル、東西4.945キロメートルの南北に細長い町であり、総面積は36.12平方キロメートル、周囲31.090キロメートルであって、同県の中央部のやや東(北九州市の南三〇キロメートル、福岡市の東三五キロメートル)に位置し、芦屋町を河口として響灘に注ぐ遠賀川水系の上流域で、筑豊盆地の南東部にある。

また、川崎町の最南端に所在する戸谷岳(とやがだけ標高七〇二メートル)より北に広大な山地と山間の集落があり、町中央部で東側の福岡県田川郡添田町より中元寺川が流れ込み、町の中心部を北へ流れ、更に町北端より福岡県田川市へ流れ出る。この川の両岸の沖積層からなる河岸段丘に水田が広がり、川の南部・西部は「花こう岩質」の山間部で森林地帯であり、川の北部・東部は地下に「古第三紀層」の地層が存在し、かつて石炭(筑豊炭田)産業が盛え多くの炭鉱跡、ボタ山、そして住宅地、商店街等がある(甲三一、四二、審尋の全趣旨)。

② 本件予定地は、川崎町中央部の東に位置する大ヶ原地区の東端部と前記添田町との町境に存するが、この大ヶ原は、中元寺川沿いの真崎平野の東側の丘陵地である。大ヶ原は、右添田町との町境(大ヶ原の南西端)をほぼ分水嶺とする北西方向へ三つの谷とその間の台地からなる。本件予定地は、その東側の谷の最上流部(南西端)にある。

そして、大ヶ原の東側の谷に「野呂ヶ池」、中の谷に「小松ヶ池」、西側の谷に「楠木池」「六郎原池」等の計七つの大きな農業用水のため池があり、「米田」「東川崎」「丸山」「櫛毛」「田原」「池尻」「森安」(以上、七つはいずれも行政区名である)等の下流域の水田(中元寺川の東側)の農業用水の水源地である。

さらに、本件予定地の直下に野呂ヶ池が存在し、そこからの水は、「米田川」「櫛毛川」を経て「田原」で中元寺川と合流し、中元寺川は更に北へ流れて遠賀川に注いでいる。

なお、本件予定地は、中央の谷に水田があり、周囲の傾斜地は自然林及び人工林の森林で、右野呂ヶ池の唯一の水源地である(甲三一、四二、審尋の全趣旨)。

(2) 本件予定地周辺の坑道跡

① 本件予定地周辺の地質は、古第三紀層の堆積岩を基盤として、その上に第四紀沖積層が被覆している。古第三紀層は、直方層群に属し、大焼累層、三尺五尺累層(本層群)、竹谷累層、上石累層に大別され、砂岩、れき岩、頁岩等から成り立っている堆積岩層であって、その間に石炭を含むさまざまな層がある。第四紀沖積層は主として砂質土であり軟らかい。また、本件予定地付近は断層が多く存在し、走向は南北、東西方向も見られるが、ほぼ北西二〇ないし三〇度程度で傾斜は一五ないし一八度東である(甲三、四二、審尋の全趣旨)。

② 本件予定地内には、「旧三矢三坑本卸」「旧三矢三坑本卸連」の二本の坑道から延びた坑道のほか、坑口のある坑道が三本あり、本件予定地の北東側で野呂ヶ池との間にも坑口のある坑道が六本存在するが、石炭の採掘は坑道から更に小さな坑道を延ばして周辺を掘り進んで行くため、本件予定地周辺の地下には無数の採炭跡が広がり、しかも多数の坑道が縦横に走っていると一応推察される。

そして、かつて大ヶ原の石炭盗掘跡に糞尿を投棄したところ、大ヶ原の北東に位置する福岡県田川郡添田町眞木地区や野呂ヶ池直下の水田に糞尿が噴出したことがあった。また、右坑道跡は、埋め戻しを行わず坑口を閉鎖しただけで放置したり水没させただけの状態のものがある(甲三、三〇、四二、四三、六一、六三、審尋の全趣旨)。

③ 右坑道は、落盤したり、崩壊して広範囲に地盤沈下となっているものと一応推認されるところ、本件予定地の一部において、昭和三五年ころ「鉱害」と認定された鉱害賠償がなされ、また野呂ヶ池についても、昭和四四年に亀裂と漏水が発生し、「鉱害」の認定がなされ、昭和四六年に改修工事が行われ、更に本件予定地内の一部水田に鉱害によるものだと思われる湧水が認められて昭和六五年に再度「鉱害」の認定が行われ、鉱害復旧工事が実施されている(甲一の一ないし、三、二、三一、四四、四五)。

④ 本件予定地の地下の地盤が不安定のため、平成九年七月一五日において、本件予定周辺に多量の降雨があった後、野呂ヶ池北側の道路が盛り上がる地盤変化を起こしている(甲三九)。

(三) 本件処分場計画の概要

本件処分場計画の概要は以下のとおりである(当事者間に争いがない)。

(1) 本件処分場計画の内容

種類 産業廃棄物安定型最終処分場

設置場所 田川郡川崎町大字安真木字比丘尼四二九四番地他二〇筆(本件予定地)

処理能力 埋立地面積 8万6182.29平方メートル

埋立容量 一〇五万五七六一立方メートル

処理する産業廃棄物の種類

建設廃材、金属くず、ゴムくず、廃プラスチック類、ガラスくず及び陶磁器くずのいわゆる安定五品目(但し、シュレッダーダストを除く)

構造 下流側に逆T字型コンクリート擁壁を構築して築堤する。

処理方法 サンドイッチ方式

排水の処理 雨水及び浸出水は調整池を経て清水だけを放流する。

放流先 施設からの放流水は調整池を経て三面コンクリート張り水路を通り野呂ヶ池へ注ぎ、同池より農業用水路、米田川、櫛毛川を経て中元寺川へ至る。

(2) 本件処分場の構造及び廃棄物処分の方法

① 廃棄物埋立の方法

本件処分場は自然に形成された谷の北部において東西から台地がせり出し谷が狭くなっている場所(野呂ヶ池の南側)を利用し、そこに高さ5.4メートル(全体の高さ六メートル)の逆T字型コンクリート擁壁を設置し、そこより南側に三〇度の傾斜をつけて高さ二六メートルまで六段の段切りをして盛土(北側のり面の長さ5.515メートル、天端二〇メートル、南側のり面(傾斜角四五度)の長さ二六メートル)をし、擁壁と盛土でせき止められる谷部に廃棄物を埋立てる構造である。

廃棄物は一日分の量を三メートル以下の厚さで敷きならし、即日五〇センチメートル以上の覆土をするいわゆるサンドイッチ方式によって埋立てる計画である。

②堰堤及び埋立予定地の地盤の性状

盛土及び埋立地の基礎地盤の性状は、盛土及び埋立地の安定(又は沈下)を左右する重大な要素であるが、本件予定地の表層を形成している第四紀沖積層は砂質土で、層厚は3.75メートルから2.5メートル程度、地耐力は平方メートル当たり一ないし三トン程度である。その下の古第三紀層は堆積岩層で砂岩・砂質頁岩・頁岩等からなり、上部の層一ないし三メートルは風化して軟質岩であり、地耐力は平方メートル当たり二〇ないし三〇トン程度である。それより深部は緊硬度が漸増し、地耐力は平方メートル当たり四〇トン以上の値を示している。

本件処分場の堰堤は、高さ二六メートルの盛土構造であるので堰堤の最も高い部分を支える基礎地盤には平方メートル当たり四四トンもの荷重がかかる予定である。

また、堰堤でせき止められた谷部に廃棄物を埋立てた場合、廃棄物は堰堤の最上部付近まで埋立てられると予想されるため、廃棄物の一立方メートル当たり平均重量を1.4ないし1.7トンと仮定すると、基礎地盤には平方メートル当たり三六ないし四四トンの荷重がかかる予定である。

そうすると、本件予定地の全体にわたって表層の第四紀沖積層及びその下の古第三紀層の上部二ないし三メートル(全体で5.6メートル)については、堰堤及び廃棄物の埋立による加重を支える地耐力が不足しており、地盤強化対策が必要である。

2  水質汚染について

(一) 債権者ら

甲事件債権者杉本利雄、同中村信行及び乙事件債権者中原春夫は、いずれも東川崎行政区の本件予定地近隣に居住し、乙事件債権者岩丸博重は、下真崎行政区の本件予定地近隣に居住し、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は、いずれも上真崎行政区の本件予定地近隣に居住し、それぞれ井戸水を飲料水又は生活用水として使用している者である(甲三五、三六の三、五、一八及び一九、五八の一及び二)。

また、甲事件債権者野仲稲親及び同中村智は、いずれも森安行政区の本件予定地近くに居住し、乙事件債権者太田裕文は、太田行政区の本件予定地近くに居住し、同伊藤憲子は、東陽行政区の本件予定地近くに居住し、同大西広幸は、上豊州行政区の本件予定地近くに居住し、同中村内廣は、永井行政区の本件予定地近くに居住し、それぞれ井戸水を飲料水又は生活用水として使用している者である(甲三五、三六の四、六、一二、一六、二〇及び二二)。

さらに、乙事件債権者佐竹始、同田中由美子及び同吉村博昭は、いずれも本件予定地近くの地下水を取水している大峰浄水場からの水道水を飲料水又は生活用水として使用している者である(甲三五、六二の一ないし三)。

なお、甲事件債権者藤井美成、同岩本勉、同樋口秀隆、同佐藤昭孜、同中野角雄、乙事件債権者河野礼至、同中村明、同佐藤瞠及び同坂木重敏は、川崎町の上水道施設を利用している(甲三五、三六の一、二、八、九、一三及び一五、審尋の全趣旨)。

(二) 本件処分場からの有害物質漏出の可能性

(1) 本件処分場は、安定型最終処分場である。しかし、安定型最終処分場においても、安定五品目の中にも他の汚染物質が残存、付着しているうえ、金属も埋立てられて長年廃棄物処分場の浸透水にさらされることによって金属間に電流が流れてイオン化傾向の高い金属は溶出する可能性が高く、また条件によっては細菌が金属を溶出する可能性もあり、廃棄物そのものは安定五品目であっても、処分場の周辺環境を汚染させ、水質が汚染される危険性があることは否定できない(甲一八、一九)。

(2) また、プラスチックやゴムはそれ自体溶け出すことはないものの、その中に含まれている様々な添加剤が溶出する可能性は高く、埋立処分場の浸出水からはフタル酸エステルをはじめ、多くの廃プラスチックの添加剤が検出されていること、環境への漏出防止がほとんど行われない安定型最終処分場に廃プラスチックが埋立処分されればプラスチック添加剤等が水質汚染等を引き起こす可能性がある(甲一五、一六)。

(3) 安定型最終処分場では、搬入された安定五品目に混入しないはずの有害物質が含まれる事例が存し、現実には安定五品目以外の廃棄物が混入されてもこれを分別することは極めて困難である。

そして、現行法上の安定五品目について何らの遮水工を施すことなく、そのまま埋立てる安定型最終処分場においては、これまで有害物質が流出して水質の汚染が発生した事例が多い(甲一四、一七、一九、二〇、二二、二四、四六、四八、四九、六八の一ないし五、六九、七四、七五、七八、八〇、八六、一〇二、一〇三、乙二一)。

(4) ところで、債務者は、他の産業廃棄物処理場において現に実行している安定五品目の選別方法として、

① 収集・運搬した廃棄物を、すべて債務者所有の積替保管場所に搬入し、

② 右保管場所に搬入するに際し「マニフェスト」(積荷目録制に係る産業廃棄物管理票)の記載と搬入する廃棄物の照合を実行し、

③ 前記保管場所において、従業員の「目視」によって廃棄物の選別を行っている。

しかしながら、債務者は、建設廃棄物も取り扱っているものの、その廃棄物については、一般の建築物を解体あるいは新築する際の廃棄物である、右五品目以外のしっくい、家電製品、塗装、畳、新建材、壁土泥、モルタル付木材、湿気とり、スレート、廃靴、アスベスト、電気配線、絨毯、電話機、バッテリー、電池、カーテン、シロアリ防除剤付コンクリート、ブラインド、雨どい、カセット、ビデオテープ、防音材、流し台、風呂桶、壁紙、電球、蛍光灯、家具、断熱材、殺虫剤等が混入しやすいため、廃棄物の中から、安定五品目を取り出し、その他の廃棄物については、中間処理に回すか、あるいは管理型・遮断型処分場で処理する必要がある。そして、債務者が本件処分場を適正に維持管理し有害物質の混入及び流出を防ぐ対策として主張する内容は、一般的かつ抽象的であって、その分別処理の専門的知識、経験、陣容、処理態勢及び採算性等に徴すると、実効性についての疑念を払拭することはできない(甲六五の一ないし一三、六七の一ないし一一、六九、七三、七五、八〇、八七、乙二一、証人吉永清美及び同嶋田秀文、審尋の全趣旨)。

そうすると、債務者において、本件処分場を建設して操業することについては、産業廃棄物の処理という公共性が存するものの、これにつき現行法下で福岡県知事所定の設置許可を得ていることだけをもって、その具体的な安定性が確保されているものということはできない。

(三) 雨水、湧水及び排水について

(1) 本件処分場の事業計画書の排水計画においては、本件予定地の周辺に排水溝(高さ八〇センチメートル・幅八〇センチメートルのU字溝)を設けて隣接地からの雨水、表面水等を集め、他方で谷の底部には鉄筋コンクリート製の透水管(枝管付)を二本設置して、埋立予定地に降った雨水や埋立て部分を通過して底部に集まった浸透水を集める構造で、いずれの水も擁壁の北側に設置される調整池に導かれるが、本件予定地内には数ヶ所の湧水点が確認されている(甲二、三、六一)。

(2) もっとも、透水管(枝管付)が集水する面積は埋立予定地のうち調整池から南側26.5メートルの地点(つまり、堰堤の下の位置)までであるため、本件処分場内の湧水や雨水で埋立てられた廃棄物の間を通過した一部は透水管を通って調整池に流れるものの、その大半は埋立て部分の法面や底部から地下に浸透することが予想され、これを遮断する構造にはなっていない。このため、本件処分場予定地の地下に坑道が走り、鉱害復旧の対象となる地盤沈下が発生して地層にズレ等の存在が予想され、また断層が存在していること等の本件予定地に地下構造と地質の特質に照らすと、埋立て部分を通過した水が地下に浸透する可能性がある。そして、埋立てが堰堤近くで行われた場合、広範囲に本件予定地に降った雨水や地下から湧き出た湧水の一部は、旧地盤面に沿って流れ下って埋立てた廃棄物の下部に浸透し、また本件処分場の湧水地点が埋立てられた後は、湧水は埋立てられた廃棄物の間を浸透すると予想され、更に覆土によって多少透水係数が低下しても、地表面から浸透した水はやがて埋立部分の底部に到達するものと一応認められる(甲六一、七一の一及び二、七二、証人中川鮮)。

(3) なお、大峰浄水場は、本件処分場北側約1.5キロメートルに位置し、その敷地内の深井戸から一日六〇〇立方メートルの地下水を取水している。また、本件予定地は、北東方向に地層が傾斜しており、かつ、その地下は坑道があるうえ、同一の石炭層がほぼ空洞のまま放置されており、本件予定地付近の地下水が大峰浄水場において取水している深井戸に流入しやすい構造となっている(甲六一、六四、証人中川鮮、審尋の全趣旨)。

(4) したがって、本件処分場の有害物質を含んだ浸出水が本件予定地から地下に浸透したり、調整池の排水口から野呂ヶ池に達するまでの間で地下に浸透し、また野呂ヶ池に流れ込んだりして付近の井戸及び大峰浄水場の水源を汚染する可能性があるものと一応認められる。

(四) 人格侵害の高度の蓋然性について

(1) 人格権を侵害された者は、物権の場合と同様に排他性の現れとして、現に行われている侵害行為を排除し、又は、将来生ずべき侵害を予防するために侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和六一年六月一一日大法廷判決・民集四〇巻四号八七二頁参照)。

そして、人は生存していくのに飲料水の確保が不可欠であり、かつ、確保した水が健康を損なうようなものであれば、たとえ有害物質の含有量が微量であっても、これを長年にわたって飲用し続けることによって体内に蓄積され、ついには健康を害し、生命・身体の完全を害することは明らかであるから、人格権としての身体権の一環として、質量共に生存・健康を損なうことのない水を確保する権利があると解される。また、洗濯・風呂その他の生活用水に当てるべき適切な質量の水を確保できない場合や、客観的に飲用・生活用に適した水を確保できたとしても、それが一般通常人の感覚に照らして飲用・生活用に供するのを適当としない場合には、不快感等の精神的苦痛を味わうだけでなく、平穏な生活を営むことができなくなるというべきである。

したがって、人格権の一種としての平穏生活権の一環として、適切な質量の生活用水、一般通常人の感覚に照らして飲用・生活用に供するのを適当とする水を確保する権利があると解される。そして、これらの権利が将来侵害されるべき事態におかれた者、すなわちそのような侵害が生ずる高度の蓋然性のある事態におかれた者は、侵害行為に及ぶ相手方に対して、将来生ずべき侵害行為を予防するために事前に侵害行為の差止めを請求する権利を有するものと解される。

(2) ところで、本件のごとく一般の住民が、専門業者を相手として、その業者の営業に関して生じる健康被害及び生活妨害を理由に、本件処分場の建設及び使用操業の差止めを求めている事案においては、証明の公平な負担の見地から、住民が侵害発生の高度の蓋然性について、一応の立証をした以上、業者がそれにもかかわらず侵害発生の高度の蓋然性のないことを立証すべきであり、それがない場合は、裁判所としては、侵害発生の高度の蓋然性の存在が認められるものとして扱うのが相当である。しかも、本件は、最終的な権利関係の確定を本案訴訟に委ねざるを得ない仮処分申立事件であるから、立証の程度が証明ではなく疎明で足りるものというべきである。

(3) そこで、前示1(二)(1)及び(2)(本件処分場の位置及び坑道跡の存在)並びに(三)(1)及び(2)(本件処分場計画の概要)の事実に加えて、右(二)(1)ないし(4)(本件処分場からの有害物質漏出の可能性)並びに(三)(1)ないし(4)(雨水、湧水及び排水について)の事実を総合すると、本件処分場からの有害物質が漏出したり、本件処分場の有害物質を含んだ浸出水が本件予定地から地下に浸透し、また調整池の排水口から野呂ヶ池に達するまでの間で地下に浸透し、更に野呂ヶ池に流れ込む等して、本件予定地、野呂ヶ池及びその各付近の井戸や前示大峰浄水場の水源を汚染する高度の蓋然性を一応認めるのが相当である。

そして、前示のとおり甲事件債権者杉本利雄、同中村信行、乙事件債権者岩丸博重、同中原春夫、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は、いずれも本件予定地近隣に居住してそれぞれ井戸水を飲料水又は生活用水として使用し、また甲事件債権者野仲稲親、同中村智、乙事件債権者太田裕文、同伊藤憲子、同大西広幸及び同中村内廣は、本件予定地近くに居住し、それぞれ井戸水を飲料水又は生活用水として使用しているところ、これらの債権者は、現在川崎町の上水道施設が一応存するとはいえ(乙一七)、これのみの利用を余儀なくされるいわれはない。さらに、乙事件債権者佐竹始、同田中由美子及び同吉村博昭は、いずれも前示大峰浄水場からの水道水を飲料水又は生活用水として使用している。

以上の債権者らは、被侵害利益の性質及び内容との比較において、前示水質汚染の実例とこれに対する債務者の安定五品目の選別方策及び排水対策の内容、付近住民に対するその具体的情報の開示の程度並びに坑道跡が存する立地条件等の諸般の事情にかんがみると、その被侵害利益が受忍限度を超えるものと判断するのが相当であるので、人格権に基づく差止請求権について被保全権利の存在が一応認められる。

しかしながら、前示の通り甲事件債権者藤井美成、同岩本勉、同樋口秀隆、同佐藤昭孜、同中野角雄、乙事件債権者河野礼至、同中村明、同佐藤瞠及び同坂木重敏は、人の飲料水又は生活用水として川崎町の上水道施設を利用しているのであって、本件記録を精査しても、その位置関係及び地形構造等に照らし、この水道水が本件処分場からの有害物質の流出等によって汚染される高度の蓋然性を有するとの具体的疎明はなく、その危険性については差し迫ったものとはいえないので、右人格権に基づく差止請求権は認められないというべきである。

なお、債権者らは、債務者が本件処分場設置許可及びこれに必要な諸手続において故意的若しくは重大な過失のもとに種々の法令違反若しくはこれに類する違法不当な行為を繰り返している旨を主張するが、それ自体所定の裁判手続等で争うべきことである。また、川崎町住民がその町議会に対し、有権者の過半数を超える八〇〇〇名余の署名を添えて本件処分場設置反対の請願をしたため、川崎町議会は、特別委員会を設置したり、福岡県に対して説明要請等をしている事情がうかがわれるものの(甲八ないし一〇、八八ないし九〇、九一の一ないし六)、本件においては福岡県知事の本件処分場設置許可を今回直ちに無効とし得る疎明資料はない。

3  その他の被保全権利について

(一) 甲事件債権者岩本勉、同中村智、同樋口秀隆、同中野角雄及び乙事件債権者中村明は、野呂ヶ池から流出する水を主に取水して農業用として利用していることを理由とし、また甲事件債権者杉本利雄、同佐藤昭孜、乙事件債権者岩丸博重及び同中原春夫は、本件処分場近くの井戸からの水を農業用水としても利用していることを理由として人格権に基づき、その侵害を予防するため差止請求権があると主張する。

しかし、農業用水については、債権者らが飲料水又は生活用水として日常的に直接飲用するのとは異なり、摂取する経路が間接的であること、本件処分場が所定の許可基準を一応満たしているものと認められること等にかんがみると、その危険性は小さく、事前に右差止めを求める権利を是認することは相当ではない。

(二) 甲事件債権者岩本勉、同中村智、同樋口秀隆及び乙事件債権者中村明は、野呂ヶ池の流出水について水利権を有することを理由として、その侵害を予防するため差止請求権があると主張する。

また、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利は、野呂ヶ池を所有する者であるとして、その侵害を予防するため差止請求権があると主張する。

しかしながら、右債権者ら主張に係る本件処分場の設置による地盤崩壊や陥没並びに本件処分場からの有害物質の流出等の規模等は不明であって、本件全疎明資料によっても、右各侵害の高度の蓋然性を認めることはできず、いずれもその危険性については差し迫ったものとはいえないので、事前に右差止めを求める権利を認めることはできない。

(三) 債権者佐藤瞠は、本件予定地の隣接地に居住し、かつ、本件予定地のうち本件係争地を所有する者であるとして、その侵害を予防するため差止請求権があると主張する。

しかし、債権者佐藤瞠作成の本件処分場新設に関する同意書(乙六の一の一〇)の署名は同債権者の自筆によるものであって、その名下の印影も同債権者の印章によるものであることが明らかであり(甲三七)、これを無効としたり、債務者の承諾を得る等して右同意を正当に解消したことを認めるに足りる的確な疎明資料はない。のみならず、前示のとおり飲料水又は生活用水については有害物質が微量であっても直接これを利用する住民の生命・身体に影響を与える差し迫った危険性を否定することはできないが、本件全疎明資料を検討しても、右債権者主張に係る本件処分場の設置により本件係争地が変形したり、地滑りや崩壊陥没等する高度の蓋然性があること、又は、本件処分場からの有害物質の流出により侵害される高度の蓋然性があることを認めることはできない。

したがって、その余の点について検討するまでもなく、右差止請求権の主張は採用することができない。

(四) 甲事件債権者藤井美成、同岩本勉、同杉本利雄、同中村信行、同樋口秀隆、同佐藤昭孜、乙事件債権者伊藤憲子、同佐藤瞠、同岩丸博重及び同中原春夫は、本件処分場への廃棄物搬入路を生活道路として使用している者であり、しかも右甲事件債権者杉本利雄、同佐藤昭孜、乙事件債権者佐藤瞠、同岩丸博重及び同中原春夫は、右搬入路付近で農業を営んでいるとして、通行権・農業経営権あるいは人格権に基づき、その侵害を予防するため差止請求権があると主張する。

しかし、右債権者ら主張に係る交通量の増大等の内容は抽象的であって、その差し迫った危険性についての疎明も十分とはいえないので、右差止請求権の法的根拠について判断するまでもなく、右は理由がない。

二  保全の必要性について

前示のとおり所定の許可基準に基づく福岡県知事の設置許可がなされているものの、本件処分場において債務者が計画している安定五品目の選別方策及び排水対策等では、一定の住民の生命・身体に重大な影響を及ぼす水質汚染の防護策につき必ずしも十全を期しているものとはいい難いこと、債務者の選別によって持ち込まれた有害物質は、浸透してきた雨水や湧水によって浸出し、また本件処分場の底部の地層や野呂ヶ池までの間の地表から地下に浸透し、更に野呂ヶ池に流入して水質汚染を惹起する危険性が極めて高く、いったん本件処分場の操業により侵害が生じたときは、債務者にその原状回復の技術や資力はなく、この汚染を除去することは極めて困難であること、右侵害が永続的に継続するおそれがあること等の事情が一応認められる(甲三三ないし三五、六一、証人中川鮮、同吉永清美及び同嶋田秀文、審尋の全趣旨)。

したがって、甲事件債権者杉本利雄、同野仲稲親、同中村信行、同中村智、乙事件債権者佐竹始、同太田裕文、同田中由美子、同伊藤憲子、同岩丸博重、同中原春夫、同大西広幸、同吉村博昭、同中村内廣、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利について、前示人格権を被保全権利とする保全の必要性が存することが一応認められる。

三  結論

以上の次第で、甲事件債権者杉本利雄、同野仲稲親、同中村信行、同中村智、乙事件債権者佐竹始、同太田裕文、同田中由美子、同伊藤憲子、同岩丸博重、同中原春夫、同大西広幸、同吉村博昭、同中村内廣、丙事件債権者江藤巖及び同江藤和利の本件申立ては、右の限度で理由があるから、本件事案内容等に照らして担保を立てさせないで、主文第一項のとおり認容し、その余の債権者らの右申立てについては理由がないから主文第二項のとおりこれを却下することとし、申立費用の負担について、民事保全法七条、民事訴訟法六一条、六四条但書を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官河野清孝)

別紙物件目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例